緩和ケア看護師の大杉佐津子さん「定年後は“おくりびと”になりたい」

大杉佐津子

丙午生まれの大杉佐津子さんは緩和ケア病棟で働いている看護師さん。

患者さんに寄り添うことはもちろんこと、悲しみを抱える家族をサポートする「グリーフケア」の資格も持つ佐津子さんの目標は「定年後は“おくりびと”になりたい」とのこと。

この目標に思い至った佐津子さんのこれまでの人生を教えていただきたく、経歴を含めて佐津子さんに手記にまとめていただくことが叶いましたので、ぜひご一読ください。

大杉佐津子

緩和ケア看護師
小原流家元教授
MRS NADESHIKO NIPPON2022 ファイナリスト
ミセスメディカルクイーン2022 準グランプリ

経歴

昭和41年(1966)、三人姉妹の長女として生まれました。

小学低学年の時、絵日記に書いた将来の夢は『看護婦さん』でした。

その頃、同居していた祖父が胃癌で治療していたこともあり、看護婦さんを身近に感じていたからかもしれません。

高校1年生の時、進路は迷わず看護の道と決め、国立病院附属看護学校に進学。

国家試験をパスして免許を取得した厳しい医療の世界、やっていけるのかと思っておりましたが、気づけば34年看護の道を歩き続けていました。

27歳の時、受け持ちの患者さまだった外資系サラリーマンと結婚しましたが、子供に恵まれず、顕微体外受精の治療にもチャレンジ。

何度か妊娠に至りましたが、今度は習慣性流産との戦いで、結果、子供のいない人生の選択となりました。

いつか辞めるかもしれないと自他共に思っていた看護師の仕事が、いつしかいろいろな意味で私を支えてくれる大きな柱の一つとなっていました。

大切な人をある日突然に失くした

最大のピンチは、大切な人をある日突然に失くしたことでした。

ちょうどその頃は、桜が満開の花を咲かせている頃でしたが、どの風景もモノクロにしか見えない状態でした。

やがて食事も摂れなくなり、寝たきりの状態に。

精神科を受診させられ、極度の鬱状態と診断され、命の危険もあるため閉鎖病棟入院と言われましたが、母が24時間診ると言ってくれ、実家で過ごしました。

なかなか鬱から脱することが出来ず、困り果てた両親が教会に連れてってくれました。

そこから少しずつよくなりたいという思いが出てきて、精神科の医師に勧められた草取りから始めてみました。

最初はやればよい的な感じでしたが、だんだんと無心になり、大の虫嫌いの私でしたが、ミミズさんと出会っても逃げずに『大丈夫』と思えるくらいになり、精神状態も徐々に回復していきました。

罹患当初、精神科の医師から看護師の仕事は一生無理と言われておりましたが、半年で大学病院の看護師として採用され復帰することが出来ました。

『グリーフケア』の資格を取得

辛かった不妊治療の経験や知識を生かしてIVF(体外受精)看護や、美容にも興味があることから美容外科看護を目標としてました。

そんな時、ある大学の講座で『グリーフケア(悲しみの中にある人をサポートすること)』が目にとまり即受講。

最大のピンチのショックから抜けきれてない状況の私に、少し前にご主人を亡くされたばかりだという教授の一つ一つの言葉が心に響き、これは同じような辛い経験をしたからこそ、心から理解できるのだと思いました。

そして今までの苦悩は無駄ではなく、大切な人を亡くした(失くした)方々に、経験をもってお役に立てるかもしれないという喜びを見出し『グリーフケア』の資格を取得しました。
その後は、希望したわけではありませんでしたが、資格を活かせる緩和ケアに携わることができました。

家族の転勤で転居した後も、緩和ケアで有名な病院でお世話になることができ、経験と資格を活かした仕事に携われていることに幸せを感じております。

定年後は『おくりびと』になりたい

今年2月に父が亡くなり、改めて思い出したことがありました。

2008年に本木雅弘さん主演の『おくりびと』という映画がありましたが、定年後には『おくりびと』になりたい、体力的に難しければ、何らかの形で携わりたいと思っています。

以前、20歳の女性の最期を担当させて頂いた時、機械浴をし、その方が最期の衣装として希望されていたお振袖を着させて差し上げたことがありました。

最期を迎えた方々が新たな旅へと向うお支度をさせて頂くお仕事。

それは最期を迎えた方々への感謝、そして残されたご家族の方々が悲しみを乗り越える第一歩。

そんなお手伝いを『グリーフケア』を加えてできたらと思っております。


佐津子さん、お忙しい中ありがとうございました。

佐津子さんが日々感じることなどを写真とともに綴られているSNSアカウントはこちらになります。

アラカン女性の可能性を広げ続けてくれる佐津子さんに心から感謝するとともに、これからも佐津子さんの動向に注目していきたいと思います(50s.online編集部)。

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